走ることについて語るときにLiuの語ること
第三部:グランドスラム、 遙かなる頂を目指して
・第1章   ・第2章   ・第3章   ・第4章   ・最終章
第二部:走ることの意味を知りたくて僕は走った
・第1章   ・第2章   ・第3章   ・第4章   ・第5章
第一部:走ることの楽しさを教えてくれた人達へ
・第1章   ・第2章   ・第3章   ・第4章   ・第5章
第二部 第3章 いろんな人に助けられている僕

レースまで後20日、まだ僕の右足首には腫れと痛みがあった。


前回、第二部第2章を書き上げたときに出場を決意したはずだったが、
僕の気持ちは揺れ始めていた。
やっぱり練習が全然足りてない、痛みが消えないって・・・



2008年11月16日。
東京国際女子マラソン、今年も彼女達の姿に感動をもらった。
途中で笑顔で手を振りかえしてくれる彼女達。
ゴール後は目標を達成できた人、できなかった人、笑顔と涙、
TVでは見る事のできないそんなワンシーン。
本気で嬉しいから、本気で悔しいから、全部輝いて見えるんだ。
・・・にひきかえ・・・僕はどうだ。
また言い訳を探し始めてないか?怪我をしてたから、練習ができなかったからって。
弱虫が顔をのぞかせる。
前回の涙を忘れたのか?本気で頑張ったから一人悔し涙を流したあの日を。



今できることを全部やろうと決めた。
練習メニューを相談して、テーピングなどもいろいろ試して
治療も継続して、しっかり食べて、休んで、言い訳を捨てて。
それでも不安全部は消えなかったけど・・・
こんな僕でも応援してくれる人がいるから、
こんな僕でも僕は信じてやりたいから
やっぱり僕は最後まで走らなければいけない。



2008年11月30日、レース当日。
いろんな想いを抱えて朝4時に目を覚ます。
電車に乗ってもいろんな事を考える。
7時過ぎにつくば駅に到着、受付を済ませSWACの集合場所に集まったのが8時過ぎ、
次々にSWACの仲間も集まってくる。
みんないろんな想い、目標を持って、これから走るんだ。
SWACの仲間約60名、それぞれの42.195kmのドラマがこれから始まる。



9時30分、スタート。
ペースなど事前に相談していろいろ決めてはいたが、
混雑の中、ダラダラしたペースに我慢できなかった僕は
スタートから無謀なペースで走ってしまう。
タイムを確認して早いのは分かってはいたけど・・・とめられない。
20km手前から足に痛みが・・・長野の時と同じだ。
それでも24km過ぎの折り返し地点までは沿道の応援に答える余裕も
すれ違う仲間に手を振る余裕もあった。

が・・・

折り返しを過ぎてからは前半無理がたたって明らかにペースが落ちていく。
向かい風が僕を苦しめる。
下を向くことが多くなる。
歯を食いしばって走る。
太腿を叩く・・・それでも足は動かない。
LAPを確認してなんとか上げようとするが・・・ダメだ・・・
いったいどれくらいの人に抜かれていっただろう。
体中が悲鳴を上げていた「もう倒れこんじゃおうよ」って。
「やっぱり僕はダメだよ」なんどもあきらめようと思った。
もう歩こう、もう止まろう、そう思ってた時、SWACの仲間が声をかけてくれた。
「がんばれ、35kmまで行けば応援がいっぱい待ってるから」
(実際いっぱいいたのは38km辺りで35kmに誰もいなかった時はビックリしたが(笑))
とにかく足を動かそう。
死ぬ気で走っるって決めたじゃないかって、
前の人たちを追うことはできないけど、それでも走ろう。
ほら、かろうじてまだ足は動くだろ、
ほら、まだ腕がふれるだろ。

37kmくらいからSWACの応援の声が増えてくる。
皆の声がまともに走れない僕の背中を押してくれる。
40km手前の最後の上り坂をSWACのコーチが併走してくれた。
たぶん一人だったら歩いてたであろう坂を僕は一気に駆け上がった。
たくさんの応援をもらう。
ほんと・・・ありがとう。

頑張ったよ俺・・・坂を下りながらいろんな事を思い出す。
もうちょっと頑張りたかったな・・・でももう限界だよな。



40km過ぎにすでにゴールして逆走してきたコーチが声をかけてくれる。
お疲れさま、疲れたよ、足が痛いよ・・・
併走してくるんだ・・・ウルッ・・・
あれっ・・・
違う・・・僕の前を走ってるじゃん・・・
えっ?速い・・・マジで?
もう限界なんですけど・・・でも・・・
負けられないでしょ。
死ぬ気で走るって約束したもんな。

ラストスパートでしょう。

スピード上げていく、コーチとデッドヒート。
背中を追いかける。並ぶ。
残っている力を全部出しつくす、いや、それ以上の力で走る。
競技場に戻ってくる、さらにスピードを上げる。
3時間20分を切れるって言われる。
全身に痛みが走る。
全身が壊れてしまいそう。
それでも走る。
そして・・・両腕を上げてゴール。
死ぬ気で走ったよ俺。。。


ゴール後、一歩も動けなかった。
両足はもうパンパンで・・・
また今回もコーチの手を借りてゴール地点を後にした。
靴紐を緩めてもらい、RCチップをはずしてもらい、
水をもらってきてもらい、参加賞をもらってもらい、
長野のときから成長してないね・・・
ごめんね、いつもしてもらってばっかりで、
いい結果で返したかったけど・・・







約2ヶ月前に捻挫して走らない時期あった。
走り始めてからも距離を踏めなかった。
いまだに痛みがある。
それでも僕はなんとか走りきった。
たくさんの声に励まされて。
みんなの走りにパワーをもらって。
今回もまたいっぱい助けてもらって。



だから・・・僕はあの坂の上まで戻った。
まだ走り続けてる人に声を送るために。
足が痛くて併走してあげることはできないけど・・・
少しでも声を届ける為に。



コーチはまだ坂を併走していた。
何十回上り下りしたんだろう。
どれだけのパワーを与えたんだろう。
どれだけの勇気を与えたんだろう。
どれだけの笑顔を与えたんだろう。
あなたのその笑顔でどれくらいの人が助けられただろう。



やっぱり僕はこのクラブが好きだ。
こんなにも愛すべき人たちと一緒に走れて。
だからまた走りたいと思えるんだろう。
ありがとう。



レースから5日、身体の痛みもとれてきた。
僕はまた明日から走り始めようと思う。
また次のドラマがクランクインする。
脚本のないドラマが。

2008/12/05