走ることについて語るときにLiuの語ること
第三部:グランドスラム、 遙かなる頂を目指して
・第1章   ・第2章   ・第3章   ・第4章   ・最終章
第二部:走ることの意味を知りたくて僕は走った
・第1章   ・第2章   ・第3章   ・第4章   ・第5章
第一部:走ることの楽しさを教えてくれた人達へ
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第三部 第1章 届かなかった山頂を見つめる僕。

2009年5月中旬、
レースシーズンが終ってもいろんな事を考えて僕は走り続けていた。
なんかいろんな事があって全部嫌になってしまいそうにもなった。
自分の弱さが、自分のエゴが目に付いて・・・自分を嫌いになってしまいそうになった。

だから・・・こそかな・・・僕は走った。

月曜を休足日と決めてそれ以外の日は帰りが遅くても天気が悪くても走った。
疲れていても、筋肉痛が酷くても、精神状態が不安定でも僕は走り続けた。
仙台を走り終えた後もう少し上をと思ってみたものの来年の延岡はまだ遠く、
その頃は目標なんてなかったし、何の為に走ってるのか、、、
「何で頑張ってるの?」って聞かれた。
自分でも分からなかった。
けど・・・とにかく走ろうと思った。
なんだかそうしなければいけないような気がしたから。

たぶん・・・もう一度ちゃんと自分と向き合う為に。

ちょうどその頃ダイエットを再開した。
約3年前、ダイエットを始めた頃7つの目標を立てた。
第1目標のアンダー90kgから最終第7目標のアンダー70kg。
そして結局は第5目標(アンダー77kg)までしかクリアできないまま有耶無耶になって、
5月初旬はその第4目標(アンダー80kg)さえもオーバーしていた。
何か全部が中途半端なような気がした。
だからもう一度、本気でダイエットを再開した。
目標は最初に立てた最終第7目標のアンダー70kg。
最初の頃こそなかなか体重は落ちなかったが6月に入ると順調に落ちていき、
6月中ごろには第6目標(アンダー75kg)をクリアした。

体重が落ちると走るのも楽になり、練習でのペースを上げていった。
走れるようになると何か楽しくて、嬉しくて、また走った。

そして僕は新たな目標を見つけた。


『グランドスラム』


市民ランナーのグランドスラムといわれるものがあって、
「フルマラソンサブ3」「ウルトラマラソン(100km)サブ10」「富士登山競走完走」
(富士登山競走はサブ4って書いてある所もある)
この3つを達成することをグランドスラムと言うらしい。
たまたま今年、富士登山競走にエントリーしていた事もあり、
僕はグランドスラム達成を目標に決めた。
それは僕にとってはとてつもなく大きな壁だ。
無謀かもしれない・・・何しろまだ一つもクリアしていないのだから。
それどころかフルマラソン以上の距離なんて走ったことがないし、
富士山どころか山と呼ばれているものを登ったこともない。
フルにいたってはまだ3時間19分台。

けどこの頃の僕にはぼんやりとだけど見えたんだ・・・その頂が、
半年前、いや3ヶ月までの僕ならたぶん見えなかっただろう頂が。
あそこからの景色はどんなんだろうって。
本気出して頑張ればきっと乗り越えられるだろうって。



目標が決まると僕は更にペースを上げた。
最初に向かえる富士登山競走ではスピードなんて必要ないのだが、
6月もずっと走り続けていた。
6月終わりの5000Mタイムトライアルではベストを更新して、
月間走行距離も初めて2ヶ月連続で300kmをオーバーした。

7月に入っても練習量は落とさず、1000Mのインターバル走では
3分45秒ペースで走るようになっていた。
僕にとって3分45秒のインターバル走7本は正直キツイ、かなり苦しい。
でも僕の自論だと「キツくても行けるんなら行った方が強くなれる」
だからキツくても、苦しくても、少し離されてもついていった。
ただ無理をしているつもりはなかった。
さすがに何度も同じ過ちを繰り返すつもりはない。
痛みがあればペースを落としてもいいと思ってたし、走るのを休んでもいいと思っていた。
無理をする意味なんてないともう分かっていたから。
ただキツいと感じて走るのと無理して走るのは違う。
限界まで追い込んでるつもりもなかったし、まだ行けるだろう、まだ頑張れるだろう、
そう思いながら僕は走っていた。
月曜の休足日は治療院や酸素カプセルで身体のケアをするようにした。
同じ過ちを繰り返さないように。

体重は7月中旬には72kg台をキープできるようになった。
ダイエットに関しては結構無理をしていた。
無理やりな感じで減量していった。
ただ走る事に関しては調子が良くのでそれが救いになって頑張る事ができた。
自分でも驚くほど疲れもなく、長く好調さをキープできていた。
このまま行けば・・・なんて考えたのが・・・悪かったのか・・・
僕が好調な時・・・それは何かアクシデントが起きる前触れ?



2009年7月24日、富士登山競走当日。

いくら努力しても自然には勝てない。



富士登山競走の練習会に参加したり、SWACの仲間に誘ってもらったりして
実際に富士山に2回練習に行くことができた。(7合目まで)
僕以外のみんなはほとんどがトレイルランナー?
北丹沢などそれぞれの目標に向けても頑張っていた。
あの中でたぶん僕だけが富士登山競走だけを目標にしていたと思う。
そんな中でほとんどロードしか走った事が無い僕が皆に着いていけたのは
かなり自信になった。
僕は上りに弱いと思っていたから。
実際は下りに弱くて、上りはそこそこ走れるんだって。
「Liuさん上り強いね」そんな一言が嬉かった。

もともとはマラソン練習の一環として参加を決め、当初の目標は8号目関門だったけど、
皆との練習の中で富士登山競走は完走できるかもって思いだした。
目標をグランドスラムとした時点でゴールしてやると、
一発でクリアしてやると思うようになった。
だってそこはゴールではなくただの通過点だから。

レース前々日にはいつもの美容院に行ってカットしてもらい、
レース前日には退社後、酸素カプセルに入り、バスで河口湖へ移動して前泊。
できる事は全てやった。
後は山頂に立つだけだった、自信もあった。



そんな思いなど吹き飛ばす天候。
そして5合目打ち切りと言う、誰も完走はできないと言う突きつけられた現実。
この2ヶ月それなりの、いや僕にしては結構な練習をして、それなりにお金をかけて、
会社も休んで来ているのに山頂に立つことはできない・・・
いろんなものが、いろんな思いが切れそうになる。

それでも僕等はスタート地点に並ぶ、制限時間も決められている。
もうそこには何も無いけれど、僕はそこに行かなければいけない。
「さぁ簡単にクリアしよう♪」
最近ずっと聴いてきたミスチルの詩を口ずさむ。
半分以下になった壁だから僕は簡単にクリアしなければいけないんだ。

7時、スタートの号砲がなる。
夢中になって走る、突込み気味で走る、疲れて歩く、そしてまた走る。
足を止めずに前へ進み続ける。
そう進み続ければ簡単にクリアできる。
そう思って足を動かし続ける。
エイドでも立ち止まらずに持参したボトルで給水を取る。
ただひたすら前に進んだ。

1時間57分03秒、僕は5合目関門を通過した。

ただの関門だったはずの5合目で終わり。
タイムは悪く無い、予想以上にいいタイムだ。
けど目指していたのは山頂・・・なんだろうこの感じ。
実際に簡単にクリアしたものの疲労感もなく、達成感もなく、悔しさもなく、何が残った?
今はまだ分からない、ただ来年もここに戻ってくるということだけは確かだ。
届かなかったあの頂へ・・・
5合目からバスで富士吉田市役所に戻る途中、窓から外を見上げると
山頂がとてもキレイに見えた。

グランドスラムの初戦。
一発でクリアするき満々だったし、クリアできると思ってた。
が、悪天候でまさかの5合目打ち切り。
僕にはまだ早すぎると誰かの忠告なのだろうか。
簡単にはクリアさせないって。
まだ先にやる事があるだろうって。



次の日から僕はまた練習を再開した。
グランドスラム挑戦第2戦は秋のフルマラソン。
こちらはさすがに簡単にクリアとは言えない。
口にするのもまだちょっと気恥ずかしい。
僕はまだ3時間15分さえも切っていないのだから。

それでも目指してみてもいいかな。

応援してくれる人もいるし。

それに・・・今、結構頑張ってるし(笑)



そう言えば7月走行距離も300kmオーバーした。
この3ヶ月の頑張りはきっと秋につながると信じてる。
「見損なっちゃ困るぜ♪不可能は辞書にない♪
そうさ僕はまだちゃんと本気だしてないだけ♪」

またミスチルの詩を口ずさむ。
8月少しだけ休んで9月からまた本気出して頑張ってみるよ。

今の僕にはハッキリと頂が見えているから。

2009/8/4